| 説明 | 〈遡及資料〉横浜港の沖に停泊する、鹿児島行路の大型船に向かう艀のなかには、これでもう逢うこともできないかもしれない恋人が乗っている。東京から車を飛ばしてようよう駆けつけた女は、座敷から駆けつけた芸者なので島田であるはずだが、後ろの形が島田のようでない。帯はお座敷向きの柳らしいが、きものは遠出用の小紋なので、髪も結い変えてきたか。髷、帯、きものがいくぶんちぐはぐな感じ。このころだれにも結われた流行の三輪髷かもしれない。ハンカチーフを振っているのはいかにも開化風のようだが、芸者のような世界にハンカチーフの普及するのは、早くて1870年代後半(明治10年代)だろう。出船の見送りに使用するという、最もハンカチのハンカチらしい、晴れの場面で、このハンカチには周りに刺繍らしい縁取りが見てとれる。男性用のハンカチには稀だが、女持ちのハンカチには手の込んだ刺繍やレースの縁取りのあるものが多い。これが絹製ででもあれば定めし高価だろうから、女性はこれで鼻をかんだりできるのだろうか。一般に日本人はハンカチで鼻をかむことをしない。それを知った西洋人の中には、日本人の清潔さを褒める人もあるそうだ。たしかに西洋人は一枚のハンカチをまるで本の頁のように開いて、何回も鼻をかむことがある。ふつう日本人は鼻をかむのはちり紙を用いて、いちいち捨ててしまうが、ただし、中には一枚のちり紙で何回もかむ節約家もいるのを、西洋人は知らないのかもしれない。(大丸 弘) |
|---|---|
| ID No. | N71-003 |
| 出典資料 | 都新聞 |
| 発行年月日 | 1900(明治33)年6月17日号 3面 |
| 画家・撮影者 | 松本洗耳(1869-1906) |
| 小説のタイトル | 実譚 江戸さくら(82) |
| 作者 | 渡辺黙禅(1870-1945) |
| 資料タイプ | 挿絵 |
| 身装画像コード | K600:[大中の港湾施設;メリケン波止場] Jmi:[見送り;出迎え] D7ge:[芸者;半玉;舞妓] D2ni:[日本髪一般] Whan:[ハンカチーフ] Vhao:[羽織] Wkut:[靴;サンダル;靴修理;靴磨き] Wbo:[かぶり物一般;帽子] |
| 時代区分・年代 | 19世紀後半;1871(明治4)年 |
| 国名 | 日本 |
| 特定地域 | 神奈川;横浜 |
| キーワード | 三輪髷;柳結び;黒紋付き羽織;ハンカチを振る;後ろ姿;背面 |
| 男女別 | 男性;女性 |
| 体の部分 | 全身 |