近代日本の身装文化(身装画像)
説明 外交官令嬢をヒロインにした、上流階級の社交生活をえがいている。毎朝、朝刊の配達されるのを待ちかねるように小説の続きを読んでいた、多くの家庭の主婦たちにとっては、外国のはなしのようにさえ思える内容だったかもしれない。上流階級の家の家具や什器はそのまま西洋の家具や什器だし、登場する美しい人物は、眼の色が青くないというだけで、服装もお化粧も、外国映画で見る西洋人そのままに見えたかもしれない。立っている令嬢の着ているものは、華やかな淡紅(トキ)色の洋装としか書いていないが、画家の森田久はさすがに、1910年代の、ポール・ポワレの作品にもよく見るようなスタイルのドレスを描いている。一方、写真製版初期のこの時代の挿絵の中には、ヒロインたちの美しい顔も今では痛ましい状態になっているものが少なくない。ちょうどこの時期にめきめき人気を得てきた伊東深水の美女などはことにそうで、森田久の担当したこの作品も、当時は製版技術やその後の劣化のためにずいぶん損をしている。画家の描く人物はその人その人の筆癖のため、ある程度は似たような顔つきになるもので、慣れた速い筆で描く新聞挿絵はとくにそういうものだが、森田の描く女性も同様。第1回の挿絵で手前に座っている女性が、第74回の大首の女性。その顔が、第1回で立っている洋装の女性とそっくりで、うっかりすると筋書きの理解が混乱する。髪型や着ているものとちがい、顔を描き分けるのは画家にとって非常にむずかしいことのようだ。座っているヒロインの美代子の束髪の後ろではわからないが、第74回の正面向きの彼女、そしてフランス帰りの洋装の弥生も、分けた髪のカールが華やかに目立って、アイロンウエーブの時代を示している。(大丸 弘)
ID No. N22-001
出典資料 朝日新聞
発行年月日 1922(大正11)年1月1日号 11面
画家・撮影者 森田ひさし(森田久)(生没年不詳)
小説のタイトル 懸賞小説一等当選 新らしき生へ(1):鷗(かもめ)(1)
作者 井手訶六(1898-1928)
資料タイプ 挿絵
身装画像コード D7sh:[小説のヒロイン;挿絵美人(この年の評判小説中の美人)]
D7re:[令嬢モデル]
D2yo:[洋髪;ウエーブ]
D6se:[洋装;西洋化;西洋観;ハイカラ;西洋かぶれ;開化ぶり;西洋憧憬]
D2hi:[束髪(庇髪など、後期平型の)]
D1ka:[髪飾り(櫛,簪,リボン)]
D3ut:[打合せ;襟あき;ぬき襟]
時代区分・年代 20世紀前半;1922(大正11)年
国名 日本
キーワード 和装と洋装の対比;アイロンウエーブ;椅子
男女別 女性
体の部分 全身;上半身
関連情報 N22-001, A22-028