近代日本の身装文化(身装画像)
説明 右田年英のこの若描きは一枚絵にしたいほどのできばえだ。キリスト教会の新年祈祷会に出席する信者の女性だが、十代の娘とはちがう、大人らしい情感が表現されている。旧来の家制度のもとでは相変わらず他家に養子に行く、養子をとる、という風習がつづいて、その養父母による、たいていは養母による養い子の虐待が家庭小説のよくあるテーマの一つになっている。ただしこの日の挿絵は「紅一点の粧いうるわしく、群芳を圧して独り立てる牡丹の花の如き」ヒロインの紹介にとどまり、詳しい衣裳付けがある。この時代の挿絵はまだ、作画意図を生かした大きさや区画を好きに選ぶことができた。「英吉利風の束髪に取り上げたる髪の艶やかなるは、雨に濡れたる烏の羽色にも比ぶべし」という束髪は、この時代すっかり人気が無くなっていた、と書いてある資料が多いが、そのなかでは山の手の上流階級や、この日の場面のようなキリスト教会関係者には相変わらず結われていた、とも書いてある。やや古風なイギリス巻の縦型束髪は、1890年代(ほぼ明治二十年代半ば)以後、束髪が洋装と並んで下火になった時代でも、東京山の手のインテリやキリスト信者には、束髪を捨てなかった人が多い。彼女の着ているのは「鳶色の肩衣(ショウル)」で、ショールは1880年代(ほぼ明治10年代)から愛好されていたが、この時代になると東京では、あたらしいコート系衣料の人気に押されはじめていた。(大丸 弘)
ID No. A01-022
出典資料 東京朝日新聞
発行年月日 1901(明治34)年1月1日号 5面
画家・撮影者 右田年英(梧斎年英)(1863-1925)
小説のタイトル 神楽獅子(1)
作者 渡辺霞亭(黒法師)(緑園)(朝霞隠士)(無名氏)(匿名氏)(1864-1926)
資料タイプ 挿絵
身装画像コード D7sh:[小説のヒロイン;挿絵美人(この年の評判小説中の美人)]
D2so:[束髪(前期縦型の)]
Wku:[頸覆い(マフラー,ストール,襟巻,ショール)]
Qfu:[縁飾り;フリンジ]
時代区分・年代 20世紀初め;1901(明治34)年
国名 日本
キーワード イギリス巻風;ショール;房飾り
男女別 女性
体の部分 全身