| 抄録 |
色の同時弁別では微妙な識別が可能であるが、記憶が関与する継時色弁別では弁別閾が劣化することが示され、OSA座標その他で色の再認がどの範囲で生じているかの研究が行われてきている。しかし、日本色研配色体系つまりPCCSのトーン(色調)分類の中で色の再認を検討したものは今までほとんど報告されていない。本研究ではPCCSのトーンを基調とした色空間において、その特定のカラーカードの色(赤-s2, 黄-d8, 緑-s12, 青-d18)がどのような傾向を示しながら正しく記憶されたり、間違えて記憶されたりするかを明らかにする。その結果、色の再認におけるこれまでの結果のいくつかを検証することが出来たが、以下のような新しい結果も得られた。(1)色再認の誤答において色相誤答よりトーン誤答が多かった。(2)緑系統の色の場合、dp(濃い)とv(鮮やかな)のふたつのトーンへほぼ等分にシフトして再認された。(3)黄系統の色の場合、圧倒的にdpトーンにシフトし、緑の場合のようにdpとvのふたつのトーンへ等分にシフトすることはなかった。(4)青系統の色の場合、主にdk(暗い)トーンにシフトして再認され、部分的にはs(強い)トーンにもシフトしたが、dpトーンには全くシフトしなかった。これらの結果から、色の再認では純度が上昇するというこれまでの結果に加えて、トーンの観点からの分析が重要であることが明らかになった。 |