| ID | 1996-03 |
|---|---|
| 展示名 | 世界の三猿―みざる・きかざる・いわざる |
| 種別 | 新着資料展示 |
| 会期 | 1996年08月30日~1997年02月25日 |
| 概要 | 「みざる、きかざる、いわざる」で有名な三猿の小像は世界各地に分布している。猿のいないヨーロッパや朝鮮半島にも、この三猿像は広まっている。「みざる、きかざる、いわざる」は民間に流布する一種の道徳であり、処世訓である。このかんがえを猿の姿をとおして表現したのは日本語の否定形の「ざる」が動物の「猿」と同音であることによる。 なかでも日光東照宮の厩舎の装飾として刻まれた三猿は、世界的によく知られている。しかし、一般の日本人は庚申信仰とむすびつく三猿に親しんできた。庚申は「かのえさる」 とも読み、その連想から、猿が刻まれるようになったらしい。庚申信仰は中国の道教に端を発する。60日に一度まわってくる庚申の日に徹夜するのは、体内から三尸の虫が抜け出し、天帝に悪事を告げないようにさせるためである。 三猿の分布は東アジアから東南アジア、南アジアをへて、アフリカ、ヨーロッパ、さらにアメリカにまで広がっている。しかし、西アジアや北アフリカのイスラーム圏においては、三猿はあまり普及していない。サルの種類はニホンザル、チンパンジー、アヌビスヒヒ、オナガザル、テナガザルなど多様であるが、種を同定できないものもおおい。 世界各地の三猿はふつう「みざる、きかざる、いわざる」だが、ヨーロッパやアフリカには「見ろ、聞け、口をつつしめ」あるいは「見ろ、聞け、言え」という三猿が存在する。また、三猿以外にも四猿の像がある。これには両手を前におく「なさざる」が加わっており、性的な意味が付与されている。 「みざる、きかざる、いわざる」の諺はそれぞれの文化によって異なった意味あいをもっている。『論語』のなかには「非礼勿視、非礼勿聴、非礼勿言、非礼勿動」(礼にあらざるものを視るなかれ、聴くなかれ、言うなかれ、おこなうなかれ)というくだりがある。実際、中国では、母は胎教にあたって、「目は悪色を視ず、耳は淫声を聴かず、口は敖言を出さず」といましめられる。儒教倫理の強い朝鮮半島でも、結婚をむかえる娘は「見ても見ぬふりをし、聞いても聞こえないふりをし、言いたくても言うな」と教育される。インドではガンジ ーが「悪を見るな、悪を聞くな、悪を言うな」と教えたことになっており、「ガンジーの三猿」として教科書などにも紹介されている。アメリカではキリスト教の日曜学校で三猿がつかわれている。三猿の像をもちいて、ポルノなどを見たり、うわさに耳を傾けたり、うそを言ったりしないように教育するのだそうである。 ふつう日光や日本が三猿発祥の地と目されることがおおい。しかし、「みざる、きかざる、 いわざる」とよく似た表現は『論語』にまでさかのぽり、世界の各地にも似たような像が古代から存在する。三猿の起源はいまだ十分に解明されておらず、類似の道徳や処世訓が世界各地に分布していることからしても、今後の研究と調査にまつところがおおきい。 なお、製作地の判明している資料はそれにもとづいて配列したが、収集地のままならベている資料もある。 |
| 備考 | 第35回新着資料展示 |