展示情報データベース
ID 1990-02
展示名 上ナイルの牧畜民─ナーリムのくらし
種別 新着資料展示
会場
会期 1990年05月31日~1990年11月27日
名義
概要 牧畜社会には、一般に仮面などの彫刻が欠如しており、彼らの物質文化がたいへん乏しいことは、これまで指摘されてきたことろである。しかし、それにもかかわらず、彼らの物質文化をつぶさに観察していくと、じつにこまかい工夫がなされていることが理解されるのである。ここでは、ナイル川上流、スーダン南部のサバンナにすむウシ牧畜民ナーリム社会における物質文化をとりあげることによって、牧畜文化の世界の一端をみていきたい。
彼らの物質文化は、基本的に彼らの生計の基盤である牧畜や農耕を中心とした食物獲得、およびその母体である家畜やテリトリーの防衛と拡大にともなう敵との戦いにかかわるいくつかの武器にしぼられる。しかし、それぞれの物質文化は、たんに用途の対象と直接むすびついた合目的的なものばかりではなく、一方でさまざまな形態的変異をうみだしている。そうした変異は、とりもなおさず彼ら牧畜民の観念的世界を投影しているのである。
東アフリカにおける牧畜民の観念的世界の核は、彼らの依存する家畜を基盤に形成されている、といっても過言ではない。彼らは、それぞれの特定の家畜、とくに去勢牛を自分のアイデンティティの対象とし、人間と家畜の関係を、私たちのいう宗教的世界にまで昇華してしまっている。それは、ときには特定の去勢牛のために、自分の命をかけ、他民族の命をうばうという攻撃性にまでむすびつくのである。こうした牧畜社会の世界は、農耕社会にみいだされる祖霊などの化身としてうつしだされる仮面のような特定集団内の自己完結的世界とは対照的である、といえよう。
備考 第23回新着資料展示